POM樹脂(ポリアセタール)の特徴と用途、加工方法を詳しく解説|XMAKE

  • 2024/09/24

POM樹脂(ポリアセタール)は、高強度と優れた耐摩耗性で知られ、自動車部品や精密機器に最適です。本記事では、POMの主な特徴、実際の用途、加工方法を詳しく解説し、実際の利用シーンに役立つ情報を提供します。

 

POM樹脂(ポリアセタール)とは?

POM樹脂(ポリアセタール)は、工業用プラスチックの一種で、正式には「ポリオキシメチレン」とも呼ばれます。一般的にはエンジニアリングプラスチックとして分類されます。

POM樹脂は、酸素原子を含む直鎖型構造のポリマーで、ホモポリマーとコポリマーの2種類があります。

  • ホモポリマー:より高い強度と硬度を持ちますが、耐熱性や加工性がやや劣ります。
  • コポリマー:耐熱性や加工性に優れており、広範な用途に適しています。

 

POM樹脂の主な特徴

高い剛性と強度

POM樹脂は、高い剛性と強度を持つことで知られています。これは材料が硬く、外部からの力に対して変形しにくいことを意味します。そのため、耐久性が求められる部品や精密な機械部品に最適です。たとえば、自動車部品や歯車のような高い負荷がかかる箇所で使用され、長期間にわたって安定した性能を発揮します。

優れた耐摩耗性

POM樹脂は、繰り返し摩擦や接触が発生する環境でも劣化しにくい特性を持っています。耐摩耗性が高いため、部品同士が接触する際の磨耗が少なく、機械の寿命を延ばすことが可能です。これは、ベアリング、スライド部品、可動部などに適しており、長期間の使用でも摩耗による性能劣化がほとんどありません。

低摩擦係数

POM樹脂は、低い摩擦係数を持っており、滑りがスムーズな材料です。この特性は、回転部品や可動部において摩擦抵抗を最小限に抑えるため、効率的な動作が求められる部品に使用されます。たとえば、スライドガイドやローラー、ギアなどの滑りや回転運動を行う部品で効果を発揮します。

耐薬品性と耐熱性

POM樹脂は、多くの薬品に対して耐性があり、酸やアルカリ、油などによって劣化しにくい特性を持っています。また、耐熱性もあり、高温環境下でも性能を維持します。このため、工業用機器や化学薬品を扱う設備の部品、または高温になる環境で使われる自動車や電子機器のパーツとしても適しています。

高い寸法安定性

POM樹脂は、温度変化や湿度の影響を受けにくく、寸法変化が少ないため、非常に精密な部品にも対応できます。加工後の収縮や変形がほとんどないため、厳密な寸法管理が必要な製品に最適です。寸法の安定性は、精密機器や電子機器などの厳しい公差が求められる場面で特に重要です。

pom樹脂の製品

 

POM樹脂の長所とデメリット

メリット デメリット
高い機械的強度 高温に対する耐性が低い
優れた耐摩耗性 UV耐性が低く、屋外使用には不向き
良好な寸法安定性 化学薬品に対する耐性が限られている
自己潤滑性があり摩擦が少ない 加工が難しい場合がある
電気絶縁性が高い 燃焼時に有害なガスを発生することがある
低い吸水性 価格が比較的高いことがある

 

POM樹脂の用途

自動車部品での利用例

POM樹脂は耐久性と耐摩耗性に優れ、ギアやベアリング、ドアロックシステムなどの可動部品に使用されます。軽量でありながら、金属部品と比べて腐食に強い点も利点です。

電子機器や家電での応用

コネクタ、スイッチ、ファンブレードなどに使用されるPOMは、高精度と寸法安定性が求められる電子部品に最適です。また、耐薬品性も家庭用電化製品において重要な特性です。

精密機械や医療機器への採用

POMは歯車、バルブ、注射器のパーツなど、精密な機械部品や医療機器にも使用されています。耐薬品性と滅菌処理への適応力から、医療現場でも信頼されています。

一般家庭用品への応用

家庭用では、水栓部品、ドアヒンジ、キッチン用品など、耐摩耗性や低摩擦が必要な部分に利用されています。POMは軽量で耐久性が高く、長寿命の製品に貢献します。

ポリアセタールの製品

 

POM樹脂の加工方法

POM樹脂の射出成形

射出成形は、POM樹脂を溶かして金型に流し込み、固めて成形する方法です。自動車部品や電子機器の部品、精密部品の大量生産に適しており、高精度で複雑な形状の部品が作れます。

POM樹脂の押出成形

押出成形は、POM樹脂を加熱して溶かし、ダイ(型)から連続的に押し出して成形する方法です。棒材や板材、パイプ状の製品など、一定の断面形状を持つ製品を大量に生産する際に用いられます。

POM樹脂の機械加工

機械加工は、成形されたPOM樹脂を削ったり切断したりして、細かい部品を作る方法です。射出成形などでは難しい小ロットの精密部品の製作に適しており、特に高精度が求められる機械部品や医療機器に使われます。

 

POM樹脂の加工時の注意点

適切な温度管理

POM樹脂は加工温度が狭い範囲で適切に管理される必要があります。温度が高すぎると分解し、有毒なホルムアルデヒドガスが発生する可能性があります。一方、温度が低すぎると溶融が不十分で成形不良が発生します。

湿気管理

POM樹脂は吸湿性が低いですが、加工前に乾燥が不十分だと成形時に気泡や表面の粗れが生じることがあります。射出成形や押出成形では、事前に十分な乾燥が重要です。

加工後の収縮対策

POM樹脂は収縮率が高いため、精密な部品を作る際には加工後の収縮を考慮して設計する必要があります。金型の設計や寸法調整を行い、部品の仕上がり精度を確保します。

 

POM樹脂と関連エンジニアリングプラスチックの比較

ナイロン(PA: ポリアミド)

ナイロンは高い強度と剛性を持ち、優れた耐摩耗性と耐衝撃性があります。POMと同様に機械部品に広く使用されますが、ナイロンは吸湿性が高く、湿気によって寸法が変わることがあります。

ポリカーボネート(PC)

ポリカーボネートは高い衝撃強度を持ち、透明性があります。POMと似たような加工性を持ちますが、耐薬品性や耐熱性が異なる点があります。ポリカーボネートはより高い衝撃強度を提供しますが、化学薬品には弱いです。

ポリブチレンテレフタレート(PBT)

PBTはPOMと似た高い機械的強度と寸法安定性を持ち、加工性も良好です。耐熱性や耐薬品性に優れており、POMの代替として使用されることがあります。

比較表

特性 POM樹脂 ナイロン(PA) ポリカーボネート(PC) ポリブチレンテレフタレート(PBT)
機械的強度 高い 高い 中程度 中程度
耐摩耗性 優れている 良好 良好 良好
寸法安定性 良好 中程度 良好 良好
耐熱性 中程度(約100℃) 高い(約150℃) 高い(約120℃) 中程度(約120℃)
耐薬品性 限られている 良好 良好 良好
UV耐性 低い 中程度 高い 中程度
自己潤滑性 あり なし なし なし
加工性 難しい場合がある 良好 良好 良好
価格 比較的高い 中程度 高い 中程度

 

まとめ

POM樹脂(ポリアセタール)は、高い剛性、耐摩耗性、低摩擦係数を特徴とし、自動車部品や電子機器、医療機器に広く使用されます。加工方法としては、射出成形、押出成形、機械加工があり、高精度な部品の製造に最適です。

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