医療機器の樹脂化:金属代替樹脂とは?そのメリットとトレンド | XMAKE

  • 2024/07/26

医療機器における金属から樹脂への材料転換は、軽量化とコスト削減を追求するための重要な進展です。樹脂化により、製造の効率化と柔軟性が向上し、設計の自由度も高まります。

さらに、金属に比べて腐食のリスクが低く、患者に対する安全性も向上します。期待される効果として、医療機器の性能向上と耐久性の確保が挙げられ、より信頼性の高い医療サービスの提供が可能になります。

本記事は金属代替樹脂の種類、特徴及び医療機器の樹脂化のトレンドについて説明します。

 

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金属代替プラスチックとは?

金属代替プラスチックとは、従来の金属部品の代替として使用される高性能プラスチック材料です。これらのプラスチックは、軽量でありながら高い強度と耐久性を持ち、腐食に強く、製造コストを削減できます。医療機器においては、患者の安全性を向上させ、設計の自由度を高めるために使用されます。さらに、製品の軽量化により、取り扱いや輸送が容易になり、全体的な効率が向上します。金属代替プラスチックは、革新的で環境に優しい材料として注目されています。

 

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金属の代替材料としては、以下のようなエンジニアリングプラスチックが広く使われています:

 

1.PAI(ポリアミドイミド)樹脂

PAIは、極めて高い耐熱性(最大約275°C)と強度を持つポリマーで、医療機器における過酷な条件下でも安定した性能を発揮します。耐摩耗性と耐薬品性が高く、電気的特性も優れています。そのため、医療機器の精密部品や高温環境下での使用に適しています。PAIは高品質な部品の製造を可能にし、医療機器の安全性と信頼性を確保します。

 

 2.PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂

PEEKは、医療機器における金属代替材料としてよく使われています。その優れた耐熱性(最大約250°C)、高強度、耐薬品性が特徴で、人工関節や歯科インプラントなどの高負荷部品に最適です。生体適合性も高く、体内での使用においても安全性が確保されています。軽量でありながら強靭な性能を持つPEEKは、長期的な信頼性と耐久性を提供し、医療機器の性能を大幅に向上させます。

 

3.PEI(ポリエーテルイミド)樹脂

PEIは、耐熱性(最大約170°C)と機械的強度に優れたポリマーです。特に外科用器具や診断機器などで、その高い耐薬品性と耐摩耗性が評価されています。また、PEIの優れた電気絶縁性と透明性は、電子機器や視覚的なアプリケーションにも対応可能です。高温でも安定した性能を発揮し、医療機器の信頼性を高めます。

 

4.PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂

PPSは、優れた耐熱性(最大約200°C)、耐薬品性、耐摩耗性を持つポリマーで、医療機器の表面処理や被覆材として利用されています。その高い化学的安定性は、薬剤や洗浄剤に対する耐性を提供し、長期間の使用にも耐えることができます。また、PPSは比較的加工しやすく、様々な形状やデザインに対応可能です。

 

これらの金属代替材料は、それぞれ異なる特性を持ち、医療機器の設計や製造において多様なニーズに応える重要な役割を果たしています。各材料の特性を理解し、適切に選択することで、医療機器の性能と安全性を最大限に引き出すことができます。

特性 PAI樹脂 PEEK樹脂 PEI樹脂 PPS樹脂
耐熱性
機械的強度
耐薬品性
耐摩耗性
加工性
電気絶縁性
吸湿性
耐紫外線性
寸法安定性
コスト

 

医療機器への金属代替樹脂の特徴

  • 軽量性

金属に比べて樹脂は非常に軽量です。これにより、医療機器の携帯性や操作性が向上します。

  • 成形性

樹脂は金属に比べて成形性に優れており、複雑な形状の医療機器を高精度に製造しやすくなります。

  • 耐食性

樹脂は金属に比べて耐食性に優れており、消毒薬や薬品に対する耐性が高いです。

  • 絶縁性

樹脂は金属に比べて絶縁性が高いため、電気機器の絶縁部品に適しています。

  • 生体適合性

適切な樹脂を選ぶ場合、生体への影響が少なく、生体適合性に優れています。

  • 低コスト

金属に比べて樹脂は安価であり、医療機器の低コスト化に寄与します。

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医療機器の業界において、金属代替樹脂はその革新的な特性で注目されています。これらの樹脂は、軽量でありながら優れた強度を持ち、金属に匹敵する耐久性を実現しています。軽量化により、患者の体への負担を軽減し、長時間の使用でも快適さを提供します。

 

さらに、金属代替樹脂は高度な成形性を備えており、複雑な形状や精密なディテールを容易に作成できます。これにより、機能性の高い医療機器やカスタムデザインが可能になり、医療機器の設計において新たな自由度が生まれます。

 

耐薬品性や耐腐食性にも優れ、薬剤や洗浄剤による影響を受けにくいため、衛生面でも安心です。加えて、金属アレルギーの心配がないため、より多くの患者に安全に使用できます。

 

生体適合性が高い金属代替樹脂は、体内に埋め込む医療機器や器具においても使用され、患者にとっての安全性と快適性を提供します。さらに、低コストで大量生産が可能なため、医療機器の製造コストを抑えながらも、デザインの自由度と機能性を両立することができます。

 

医療機器への金属代替樹脂の活用状況

 

医療機器への金属代替樹脂の適用事例

 

1. 人工関節

人工関節は、摩耗や腐食に強い素材が求められるため、金属代替樹脂が広く使用されています。特にPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は、生体適合性が高く、強度と耐久性に優れているため、人工股関節や膝関節のプラスチック部品として採用されています。これにより、手術後の回復が早まり、患者のQOL(生活の質)が向上しています。

 

2. 歯科インプラント

歯科インプラントにもPEEKが利用されています。金属代替樹脂は、軽量でありながら強度が高いため、天然歯と同様の感触を提供し、患者にとって快適な使用感をもたらします。また、金属アレルギーの心配がないため、より多くの患者に適用可能です。

 

3. 外科用器具

外科手術に使用される器具にも金属代替樹脂が採用されています。例えば、手術用ハサミやクランプなどは、PEI(ポリエーテルイミド)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)が使用され、軽量化と操作性の向上が実現されています。これにより、外科医の負担が軽減され、手術の精度が向上します。

 

4. 血管ステント

血管ステントにも金属代替樹脂が応用されています。特にバイオコンパチブルな樹脂素材は、血管内での適合性が高く、体内での長期使用に耐えることができます。これにより、患者の治療効果が持続し、再手術のリスクが低減されます。

 

金属代替樹脂の実用シェアと市場動向

金属代替樹脂の医療機器市場におけるシェアは年々増加しています。特に、PEEKやPEIなどの高性能樹脂の需要は高く、これらの材料は多くの医療機器メーカーに採用されています。市場調査によると、医療機器市場における金属代替樹脂の利用率は2023年に約20%を超え、2025年までには30%以上に達する見込みです。

 

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医療機器の樹脂化のトレンド

  • 高性能ポリマーの活用

医療機器分野では、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)やPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの高性能ポリマーが金属代替材料として注目されています。これらの高性能ポリマーは、優れた機械的強度、耐熱性、化学的耐性を持ち、医療機器の軽量化や高機能化に貢献しています。

 

  • フッ素ポリマーの需要増加

医療用フッ素ポリマー市場は、2022年に4億5143万米ドルを超え、2023年から2030年にかけて10.6%以上のCAGRで成長すると予測されています。フッ素ポリマーは優れた耐薬品性、耐熱性、生体適合性を持ち、医療機器分野での金属代替材料として期待されています。

 

  • ウェアラブル医療機器への用途

医療機器の樹脂化では、ウェアラブル医療機器への応用が注目されています。軽量で柔軟性のある樹脂材料は、患者の快適性を向上させ、医療現場での利便性も高めることができます。

 

  • 品質管理システム(QMS)の強化

医療機器分野では、製品の品質と安全性が非常に重要です。そのため、金属代替樹脂の開発においても、品質管理システム(QMS)の強化が求められています。これにより、製品の信頼性と安全性が確保されます。

 

  • M&Aによる技術の獲得

医療機器メーカーは、金属代替樹脂の開発や製造技術を獲得するために、M&Aを活用しています。これにより、新しい材料や製造プロセスを迅速に取り入れることができ、製品の競争力を高めることができます。

 

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高性能ポリマーの活用は、医療機器の耐久性や耐薬品性を飛躍的に向上させるだけでなく、軽量化やデザインの自由度を高めることにも貢献します。特に、生体適合性の高いバイオコンパチブルなポリマーは、生体組織との親和性が高く、人工関節や心臓弁などの内部医療機器において、安全かつ効果的に使用されています。

 

また、フッ素ポリマーの需要が増加しており、医療機器の表面処理や被覆材として注目を集めています。フッ素ポリマーは優れた耐候性と耐薬品性を持ち、抗菌性や低摩擦性も兼ね備えているため、多種多様な医療機器に活用されています。

 

ウェアラブル医療機器への応用も樹脂化の進化を促進しています。身体に直接装着することでリアルタイムの健康管理が可能となり、患者の生活の質を大幅に向上させることが期待されています。

 

さらに、品質管理システムの強化は、医療機器の安全性と信頼性を確保するために欠かせません。樹脂化された医療機器は、厳格な品質管理基準を満たす必要があり、信頼性と持続性を確保するためには確かな品質管理が求められています。

 

また、M&Aによる技術の獲得は、新たな技術や製品の開発を加速させる手段として注目されています。技術の統合や研究開発の強化を通じて、より高性能で安全な医療機器の開発が期待されています。

 

まとめ

金属代替プラスチックは、軽量で強度が高く、耐薬品性や耐腐食性に優れ、形状加工が容易でデザインの自由度が高いという利点があります。これにより、患者の快適な装着感と使いやすさを提供し、電子機器との干渉が少なく、医療機器の信頼性と安全性を高めます。技術の進化により、より高性能で安全な医療機器の開発が期待され、金属代替プラスチックは今後の医療技術の発展に大きく貢献するでしょう。

 

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参考文献

・金属代替・樹脂化の課題は〈難燃塗料〉で解決できる | 素材を知る| PLAS MIRAI+ プラスチック業界が目指したい持続可能な未来を共に考え、共に創る「場」. (2023, October 27). PLAS MIRAI+ プラスチック業界が目指したい持続可能な未来を共に考え、共に創る「場」. https://www.mitsui-plastics.com/plas-mirai/material/fire-resistant-paint_lp/

 

・Medical Plastics Market Size, Share & Trends Analysis Report By Product (PE, PP, PC, LCP, PPSU, PES, PEI, PMMA), By Process Technology (Extrusion, Injection Molding), By Application, By Regions, And Segment Forecasts, 2024 – 2030. (n.d.). https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/medical-plastics-market

 

・Medical Polymer Market Size, Industry Share Forecast Report [Latest]. (n.d.). MarketsandMarkets. https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/medical-polymer-market-211635984.html

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